記憶のないお泊まり会
기억 안 나는 자고 간 날
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=7324365
渡辺さんのお家に行った桜内さんが誘う話です
付き合ってます
渡辺さんってドSスイッチとか持ってそう
曜ちゃん宅でのお泊まりは数回目。
「バス停に着いたら迎えに行くよ」って言ってくれた彼女に対して「もう覚えたからひとりでも行けるよ」と断ってしまった。理由としては家を出るときに千歌ちゃんから「イチャイチャしすぎて、筋肉痛にならないでね〜」なんて揶揄いの言葉を貰ったせいで変に緊張していたから。いつもより速い心臓を落ち着かせる時間がすこしでも欲しかったから。
気がつけば、曜ちゃんの家の前に立っていて、胸に手を置く。ちょっとは落ち着いたかな…と心の中で呟いて、インターホンに指を伸ばす。すぐに押せばいいのに、いったん引っ込めて、深呼吸。
「よし…」
改めて、インターホンを押すと外まで聞こえてくるピンポーンという音。パタパタと階段を降りてくる音が聞こえてきたかと思うと、すぐに扉が開いた。勢いが良すぎて、後ろによろけていると驚いた曜ちゃんに腕を掴まれて引き寄せられる。バランスを整えて、改めて彼女を見た。
「梨子ちゃん、いらっしゃい!」
いつも通りの人懐っこい笑顔。身体を横にして「あがって、あがって!」と家の中に通してくれる彼女に持ってきた手土産を渡すとキラキラした表情で「これなに?」と尋ねられる。私の手作りクッキーだと伝えるとさらに嬉しそうな顔をして「わー、早く食べたい!」なんて言うから私まで嬉しくなっちゃって玄関だと言うのに軽いキスをしてしまう。目を大きく開いて固まる彼女がいて、すぐに謝罪の言葉をかける
「…あ、ごめん…。ここじゃ、嫌だった?」
「そんなことないけど、梨子ちゃんからキスしてくれるの珍しいから驚いちゃって」
「そう?」
珍しいかな…?
まぁ、確かにいつもキスをする時は曜ちゃんからしてもらうことが多いけど…
「そうだよ。梨子ちゃんからキスしてくれたのいまので3回目だからね」
たぶんもうすこし多いと思うよ、曜ちゃんが寝ている間にキスしてるから知らないだろうけど。
というか、よく覚えてられるよね…
「わざわざ覚えてるの?」
「覚えてるっていうか、梨子ちゃんとちゅーした日はちゃんとメモってるからね」
「恥ずかしいことしないでよ…」
「別にいいじゃん!日記だよ、日記!」
悪戯っぽい笑顔を浮かべる曜ちゃん。
そうゆう問題じゃないよ、って言ってやりたい。注意しても聞いてくれなさそうだから言わないけど。
「それに大事な思い出だからさ、忘れたくないの!」
そう言って、履いていたサンダルを脱いで中にあがる曜ちゃん。恥ずかしいことをさらっと言う子だなぁ、なんて赤くなった顔を俯かせる。不審に思われないように私も靴を脱いであがった。すぐにしゃがみ込んで、曜ちゃんのサンダルと合わせて自分の靴を綺麗に整えると「几帳面だね〜」と上から呑気な声が飛んできた。立ち上がって曜ちゃんを見ると無邪気な笑顔を向けられる。可愛いと思って、またキスしたくなった
「……」
「なに?またちゅーでもする?」
「し、しないよ…!」
するって言っておけばよかった。項垂れていると私を揶揄うようにニヤニヤしながら「じゃあ、どうして見てくるの?」と尋ねてくる曜ちゃん。分かってるなら自分からキスしてくれれば良いのにって思うけど、それを言っても「梨子ちゃんからして欲しいんだよ〜」なんて返されるに決まってる。
ここは素直になるしかないよね…
「…やっぱり、キスする」
「うん、して?」
私よりちょっとだけ身長の低い彼女。目を閉じて、少しだけ顔をこちらにあげてくれる仕草が可愛くて、長めのキスを送る。主導権は私にあるはずなのに、先に息が上がってしまうのは彼女が水泳選手だからであって、決して私が興奮しているわけではない。と思う。
「梨子ちゃん、鼻息荒いよ」
「う、うるさい…!」
「ふがっ…!」
雰囲気もなにもない彼女の鼻を摘む。離して欲しそうに手をジタバタする曜ちゃんに「そうゆうこと言わないなら離してあげる」と言ったら頷かれるので左右に大きく振ってから解放してあげる。恨めしそうに睨まれるので「なにか?」と言うように見下ろすとふいっと顔を逸らされるので、くすりと笑った。
「それよりも曜ちゃん」
「ん?」
「私はお客様だよ?いつまでここに居させるつもり?」
ちょっと偉そうに言ってみると慌てた様子を見せる曜ちゃん。揶揄うつもりだったけど、「ご、ごめんね…!」と何度か頭を下げてくる彼女に罪悪感をが覚えた。頭に手を乗せて、撫でてあげながら「落ち着いて」と笑いかけると落ち着いてくれる。
「怒ってないよ。曜ちゃんの部屋、行こう?」
「うん!」
「手でも繋ぐ?」
「繋ぐ!」
冗談のつもりで言ったけど、差し出した手を絡め取られてしまった。ちょっとドキドキするけど、まだこれくらいなら平気。手を引いてくれる彼女の後ろを歩いて、階段を登って、部屋の前に到着する。扉を開けてくれる曜ちゃんにお礼を言って中に入ると相変わらず千歌ちゃんの写真がたくさん飾ってあって、ちょっとヤキモチ。そんな私に気が付いたのか、気が付いてないのか、曜ちゃんは私の背中を押して自分のベッドに座らせた
「飲み物、持ってくるよ!」
「それなら手伝うよ」
「いーの、いいの!梨子ちゃんはお客様だからね!」
笑って、部屋から手で行く曜ちゃん。
さっきまで余裕なさそうにしていたくせに、なんて思いながら部屋をぐるりと見渡す。何度来ても落ち着かない。無礼だと分かっていながら、ごろんってベッドに上半身だけ横にさせた。近くの枕を胸に抱き寄せて、顔を埋める。お日様の匂いと…
「……曜ちゃんの匂いだ」
………って、これだと私が変態みたいじゃない!
勢いよく起き上がって、抱き寄せた枕をベッドに叩きつける。せっかく整えてきた前髪をくしゃくしゃにしていて、ため息を吐く。
無駄に疲れた…。また横になっちゃおうかな…。
再び、横になるとちょうど顔の近くに枕があって仄かに香ってくるお日様と曜ちゃんの匂いを胸いっぱいに吸い込む。うん、落ち着く…。
変態だと思うけど、曜ちゃんにバレなければいい話だ。もう少しだけ、なんて思っていると羞恥心のどん底に突き落とされる
「なに………やってるの?」
曜ちゃんの声が部屋に響いた。現実だと分かっていながら夢であって欲しいと望む。ぎこちない動きで、起き上がると曜ちゃんが立っていた。
すごい苦笑いしてる…。見られた、見られたよね…。
頭の中には「死にたい」って四文字が並べられていて、私はすぐに布団の中に潜り込む。
あ、曜ちゃんの匂いだ…って、そうじゃない…!
頭の中でバカみたいなことをしていると、彼女の足音が聞こえてきて、こちらに近づいてるのだと分かる
「梨子ちゃーん、私の質問に答えて」
「なん……でしょうか」
「だから、さっきなにしてたの?」
「なにもしてません」
敬語を使ってる時点で変なことをしていたのはバレバレだよね…
曜ちゃんが腰掛けたことによって、ベッドが揺れた。お腹あたりを撫でられて「梨子ちゃん」と優しい声で私の名前を呼んでくるから、堪らない。顔だけ布団から覗かせれば、声と同様に優しげな瞳をした曜ちゃんがいて、「あーあ、髪がくしゃくしゃだよ」なんて乱れた髪を整えてくれた
「あの、ね…」
「うん?」
「さっき、曜ちゃんの枕の匂いを嗅いでました」
まるで悪いことをした子供のような気分だ。曜ちゃんの顔を伺うと、当然だけど固まっていた。
終わった、今日はお泊まり中止かな…
そう思っていると、曜ちゃんがゆっくりと口を開いた
「………梨子ちゃんの変態」
なにも言い返せない、その通りだから。ずるずると布団から出て、今日は帰るということを伝えようと思ったのに、曜ちゃんに喋らせてもらえなかった。
口を口で塞がれる行為、つまりキスされていたのだ。
離れていく彼女を目を見て、やばいって本能が告げる。なにがやばいって、決まってるじゃない。
逃げないと絶対に襲われる…
分かっていても、ベッドの上で、前の道は完全に彼女に塞がれていて、後ろはすぐに壁だ。ゆっくりと彼女が迫ってくるから、反射的に後ろに下がるけど、さっきも言った通り、壁に邪魔をされる。
「…逃げなくても、大丈夫だよ」
「よ、曜ちゃん…」
そんなギラギラな瞳をしておいて、よくそんなことが言えたものだ。反抗のつもりで睨みつけると、顔の両脇に手が伸びてきた。
あっ、これは…
「壁ドン、だっけ?」
「…そ、そうだね」
「知ってるよ、梨子ちゃんが好きなのは…」
顎を掴まれて、逸らしていた顔を思い切り引き上げられる。
やばい、これはまずい…。かなりときめいた…。
顔に熱が集中して、赤くなるのを感じる。
「…壁クイだよね」
くすりと笑われる。
確かに壁クイは私の好きなことだ。でも、それを人に言ったことはない。
じゃあ、どうして彼女は知っているのだろう…?
「前に梨子ちゃんの部屋でそうゆう本を読んだから」
「へ?」
「声に出てたよ?」
しまった…。って、それよりも不味いこと言われたよね
前に私の部屋で本を読んだ。あれを?曜ちゃんが?
恥ずかしさで私の頭の中にはまた「死にたい」って文字が浮かび上がった。顔を手で覆おうとすれば、すぐに取られて壁に縫い付けられてしまう。見上げれば、揶揄うような視線の奥に情欲の炎に燃え上がるアクアブルーがあって、ぞくりとする
「…梨子ちゃん、私の枕を嗅いで、なにを思ったの?」
「なにを思った、って…」
「興奮した?」
「…っ、してな…」
「図星かぁ…」
やらし〜
揶揄われて、下腹部の奥の方が締まる感覚がした。
ま、ずい……。したくなってきちゃった…。
これだと変態だと思われる。あ、思われてるのか…。
「なら、いいかな」とか考えてしまうけど、そんな煩悩はすぐに頭から追い払う。キッと睨もうとしたら、楽しそうな笑顔を見せられて、出来ない。
「…ねぇ、梨子ちゃん」
「な、に…?」
「したいでしょ?」
息が詰まって、ごくりと音を立ててしまう。
言葉なんてなくても、私の返事は彼女に伝わったようで「ほんと、やらしいね」なんて目が細められた。
どうやら、私は曜ちゃんの押してはいけないスイッチを押してしまったようだ。
「誘ってみて」
「は…?」
「私のこと、ちゃんと誘えたらしてあげるよ」
なんて上から目線なのだろう。と思ってもサディスティックな瞳をした彼女に逆らうわけにもいかない。前に一度だけ逆らったら、そのあとがひどかった。暴力的なことはしないけど、散々焦らされた挙句にひとりでしてみて、なんて言われて。満足したかなって思ったのに全然足りてなさそうな顔をされて、結局は朝まで啼かされて、身体中に痕を所狭しとつけられて、足腰なんてガクガクして使い物にならなくなった。
思い出すだけで、身体が熱くなるのは仕方ない。
「ねぇー、誘わないの?誘うの?」
「…っ、さそ……」
「さそ?」
「さそ………う」
まだ昼にもなってないのに、なにをしてるのだか…
満足そうな顔をして、私の腕を解放してくれる曜ちゃん。優しそうな顔をしているけど、依然として瞳の奥はギラギラとしていて、スイッチは押されたままだ。逃げ出すことは許されない。
「じゃあ、誘ってみて」
誘う、って言ったけど…。どうすればいいのかな…。
たぶん普通にしたいということを伝えてもいまの彼女は満足してくれない。かと言って大胆すぎることは冷静な頭では絶対に出来ない。いまの私に出来る最大の誘い文句はいったいなんだろう…。
ぐるぐるしている間に、待っているのが退屈なのか曜ちゃんの指先が私の身体をなぞって弄ぶ。肩から腕、また肩に戻って、今度は胸を通って脇腹に移動する。これだけで感じてしまう自分に驚いた。
「…っ、ふっ…」
「気持ちいいの?じゃあ、やめないとダメだね」
声を微かに漏らしただけなのに、曜ちゃんはあっさりと手を引いてしまう。私の身体を触っていた手に自分のそれを伸ばそうとすれば、「まだ、だーめ」とやんわりと逃げられる。触るのも厳禁なのかと、誘うのがさらに難しくなった。もう思いつくものなんて服を脱ぐことくらいしか無いけど、冷静な私が絶対に無理と止める。とりあえず、肌蹴させるくらいは…
「…それで誘ってるつもりなのかな?」
白いブラウスのボタンを一個、二個と外したところで手を止めると尋ねられた。どうせ満足してないのだろう、って勝手に決め付けて首を振る。
「……違うよ」
「あ、違うんだ。頑張ってるからそれで勘弁してあげようと思ったのに…じゃあ、続きして?」
嘘だ。仮に私が「そうだよ」って答えても「んー、もうすこし頑張れない?」とか言ってきたに違いない。だから、ガッカリもしない。手を止めたまま、すこし胸元を開いて、腕を寄せる。
…あんまり谷間って出来ないね。
自分でやったことだけど、ちょっと虚しくなった
「誘うの、難しい?」
「誘ったことないし…」
「あるでしょ」
「それは気分が上がってる時で…って、なに言わせるの…」
ふぅん、と意味ありげな声が聞こえてきた。
同時に再び彼女の手も伸びてくる。
私の肩に触れて、そのまま首筋に移動されて、耳まで辿り着く。ふちをなぞられ、耳朶を指で挟まれて。もともと感じやすいのか、私は息がすこしずつ上がる。ゆっくりと曜ちゃんが近づいてきて、なにをされるのかと思っていたら、手があるところ、耳に唇を寄せられた
「今日は特別に、気分だけ上げさせてあげるよ」
いつもより低音で囁かれて、それだけで反応した。直後にぬるりと熱く濡れた感触が耳に走って、すぐに口に含まれたのだと分かる。指先で触れていたように舌でふちをなぞられて、歯で耳朶を甘噛みされる。声なんて抑えられるわけもなくて、簡単に漏らしてしまう
「ぁ、んぅ…」
耳が解放されて、濡れたところが空気に触れて冷たいのに身体は熱くて、熱すぎる。ピアノばかりやっていて、自他共に認める白い肌がほんのりと赤に染まっていて、今日はやけに感じやすい、なんて自己分析。確かに彼女の言った通りに気分はかなりあがった…というか、えっちな気分になった。でも、まだ冷静な部分がある…。なんて思っていたら察したのか、曜ちゃんは首筋をひと舐めしてきた。
「いっ………ぁ…」
「そんな声、出さないでよ。苛めたくなっちゃう」
もう十分に苛めていると思うのは私だけ?
なにを考えて、なにを言おうとしても、私の口から出るのは彼女から与えられる微かな快感に溺れる声だ。数往復、たまに歯を立てられながら首筋を舐められる。満足したのか、曜ちゃんの舌はゆっくりと下りて行って、肩に到達した。ぎりぎり痕のつかないくらいの強さで噛みつかれる。
「よ、ぅ…ちゃん、って…ぁ…」
「ん?」
「噛み癖、ある…んっ、よね…」
「あー、そうかも。でも、噛んじゃうのは…」
梨子ちゃんが美味しそうだから
相変わらず、恥ずかしいことをさらりと言ってのけた。このまま普通の会話を続けて、なし崩しに…と思っていたのに曜ちゃんは私の考えなんて見透かしているようで、くすっと笑われてしまう。「それじゃあ、ダメだよ」なんて言われて、項垂れる。そんな私を他所に曜ちゃんは私の身体、いや、肩より上を苛めることに戻った。
「ねぇ…そろそろ、誘えるようになった?」
たぶん二十分くらい経ってから尋ねられる。
散々、耳やら首筋やら肩を苛め抜かれて、私だって我慢の限界だ。大事なところだって、かなり濡れていると思う。なのに、自分でも分からない何かが邪魔をする
「んっ……ま…ぁ…、って…」
「これ以上は、結構…私の方がやばいかも…」
「だから…ま、っ…んぅ…」
「次『待って』って言ったらお仕置きだから」
ちょっと待って、と声に出さなかったのは賢明な判断だったと思う。閉じていた目を開けば、最初の頃にあった余裕なんて消えて完全に飢えた獣の瞳をする曜ちゃんがいて、さっさと身を委ねてしまえたらいいのに、なんて思ってる。
視線をずらせば、彼女の机のそばにあるコルクボードが目に入った。そこには千歌ちゃんの写真があって、ピンと来た。これだ、私が素直になれない理由…。
千歌ちゃんに言われた「イチャイチャしすぎて、筋肉痛にならないでね〜」という揶揄いの台詞。
明日は休日だけど、練習の日だから…。確実に今の彼女に身を任せると筋肉痛になってしまうから…。
どうしよう…
「梨子ちゃん」
「んっ、?」
「好きだよ、大好き」
「…っ、ど、したの…」
「好きなの……だからさ」
抱かせてよ
誘わせるはずの彼女が誘ってきた。
微かに残っていた理性なんて吹き飛んで、目を閉じる。
千歌ちゃん、ごめんね…。明日は筋肉痛かも…。
曜ちゃんの首に腕を回して、自分が仰向けになるように横たわる。端から見れば、曜ちゃんが私を押し倒しているようにも見える体勢。すこし身体を浮き上がらせて彼女の唇に舌を這わせる
見つめながら、低く、甘く、切なそうに囁く。
「めちゃくちゃにして……好きなだけ、抱いて…」
そこから先はよく覚えてない。
ただ、ひとつだけ。その日はベッドから出なかった。